加賀屋醸造について

加賀屋醸造 諏訪幸一

当家は四百年程前、同じ町内にある日照山本光寺様と供に北陸方面から飯山に移ってきたと伝えられております。当初は造り酒屋を営み元禄年間の資料では酒造石高二百六十四石と記録(飯山市誌歴史編より)されております。その後、呉服屋を経て大正時代に味噌醸造を生業といたしました。現在、加賀屋諏訪家十六代目、味噌屋としては三代目を継いでおります。

故郷の文化、故郷を愛する心に、食べ物・味の占めるものは大きいものがあります。また、普段使っているもの毎日味わっているものこそがその根底をなすものだと思います。奥信濃唯一の信州味噌醸造元として「故郷の味・家庭の味」を守り伝えるお手伝いをしていきたいと考えております。

加賀屋醸造 味噌

私共が味噌にとって最も必要と考えているものは「麹の品質」と「醸造期間の長さ」です。麹はすべて国産丸米、昔ながらの麹蓋を使用した手造り麹です。特定米穀(主食に向かない小粒の米)等一切使用しておりません。醸造期間は最低でも一年です。

詳しくは申し上げられませんが、当蔵の製造方法は一般的な方法からは少々外れたことも多々あります。麹菌にしても多くは酵素力価の高い短毛種を使用しておりますが、私共は酵素力価のあまり高くない長毛種を使用しております。

私の主観ではありますが程々の酵素力価で時間をかけてゆっくりと発酵熟成したものの方が美味しく感じられます。

加賀屋醸造 味噌玉

一般的な玉造りは味噌玉の周りにカビを生じさせますが、当蔵は味噌玉の熟成室に昼間の乾燥した外気、夜間の湿潤な外気を常に取り入れ、余計なカビを生じさせること無く当蔵の蔵付菌とともに飯山の風土・土地付菌そのものを取り入れております。

味噌玉の熟成方法また天然醸造という製造法によりプロにはあるまじきことですが当蔵の味噌は味が一定とはいえません。その年によりその季節により微妙に変化いたします。大げさに言えば一期一会の味です。

当蔵の味噌はふるさと飯山の風土がつくり上げたものです。雪深く、厳しく、優しく、美しい飯山の四季に守り育てられた長期熟成の味をお試し下さい。この味も奥信濃飯山の文化の一つと自負しております。